衛生管理者という資格を聞いた事がある方は多くおられるかと思います。
この資格は福祉業界以外にも、製造業や運送業でも需要があり実に幅広い分野で必要とされているのです。
衛生管理者について
- 資格の内容や業務内容を知りたい。
- 試験の申し込み方法、難易度、合格率を知りたい。
- 転職時に需要はあるのか。
と感じている方は多くおられるのではないでしょうか。
今回は衛生管理者の受験申込や資格取得方法、業務内容や試験内容・合格率などをお話してゆきます。
最初に
衛生管理者とは簡単に言うと、
- 職場の衛生管理
- 従業員の衛生管理
の2点を行う者となります。
事業所の規模により配置義務が定められており、またこの資格は国家資格となりますので幅広い分野で需要があります。
そしてこの資格は更新がなく、一度取得すると一生モノなのです。
それでは衛生管理者についてもう少し詳しくご紹介してゆきます。
指定機関
衛生管理者の資格を取り仕切っているのは公益社団法人 安全衛生技術試験協会という機関となります。
この機関は全国で7ヵ所あり、衛生管理者以外にはボイラー技士や発破技士、ガス溶接作業主任者などの国家資格の元締めとなります。
衛生管理者の種類
衛生管理者には2種類あり、
- 第一種衛生管理者
- 第二種衛生管理者
となります。
簡単に説明すると、
第一種衛生管理者は全ての業種に適応されるのに対し
第二種衛生管理者は一部の業種に適応されるという事です。
因みに福祉業界では第二種衛生管理者でも適応されます。
第一種衛生管理者
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業が該当します。
有害業務と関連が強い業種の場合、第一種衛生管理者の資格が必要となります。
これらの業種に就いている方は第一種衛生管理者が必要となります。
第二種衛生管理者の資格は適応されませんので注意です。
第二種衛生管理者
情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業が該当します。
有害業務と関連の少ない業種の場合は第二種衛生管理者が必要となります。
これらの業種に就いている方は第一種衛生管理者の資格も適応されます。
衛生管理者の業務内容
衛生管理者が行う業務としては、
- 作業環境の管理
- 従業員の健康管理
- 従業員への労働衛生教育
- 健康保持増進に向けた措置
となります。
職場の環境と共に従業員の作業環境の把握と改善、それに対しての措置や労働衛生に関する教育を従業員に行う事となります。
また、衛生委員会を設置する場合は構成メンバーとなる必要があり、最低毎週1回の現場の巡回と労働衛生に関わる改善策の検討などが必要となります。
衛生管理者の配置義務
衛生管理者の配置義務が発生するのは、当該事業所に従業員が50名以上いる場合となります。
また、従業員の人数に対して衛生管理者の配置数は変化しますので注意が必要です。
以下に従業員数と衛生管理者の必要配置数を纏めましたので参考にしてください。
事業所に所属する従業員数 | 必要となる衛生管理者 |
50人以上~200人以下 | 1人 |
201人以上~500人以下 | 2人 |
501人以上~1000人以下 | 3人 |
1001人以上~2000人以下 | 4人 |
2001人以上~3000人以下 | 5人 |
3001人以上 | 6人 |
基本的には以上の様な衛生管理者の人員配置が必要となります。
尚、衛生管理者は当該事業所に専属である必要があり、他の事業所と兼任して登録する事は出来ませんので注意が必要です。
難易度と合格率
人により得手・不得手な分野はありますが、テキストと過去問を繰り返して勉強すれば十分に取得できる資格です。
合格率も国家資格の中では高く、絶対に手が出ないというレベルではありません。
ただし、年々合格率は下がっている傾向にあるので、余裕を持って勉強の時間を取る事と年度に応じた過去問に触れる事、またインターネットなどで出来るだけ直近の問題に触れる事が合格へのカギとなるでしょう。
第一種衛生管理者の合格率
2018年度の合格率は44.2%となっています。
傾向として、2014年度の合格率は56.3%であり、2016年度の合格率は45.5%と約10%下がっています。
第二種衛生管理者の合格率
2018年度の合格率は52.4%となっています。
傾向として、2014年度の合格率は69.3%であり、2016年度の合格率は55.5%と約15%下がっています。
受験申し込み
願書の取り寄せは
- 公益社団法人 安全衛生技術試験協会(本部)
- 全国に7ヵ所の各センター(支社と考えて下さい)
に請求すると郵送してもらう事ができます。
また、直接取りに行ってももらえます。
実はこの資格、願書の準備と記入は大した事ではないのですが、願書と併せて提出が必要となる
- 事業者証明書
- 本人確認・受験資格及び科目免除に関する添付書類
の準備がひと手間掛かるのです。
事業者証明書
『労働衛生実務の内容』と『労働衛生の実務に従事した期間』の2点を事業所に証明してもらう必要があります。
簡単に言えばこれは会社の在籍期間となります。
会社にお願いして、在籍期間を調べ記入してもらいましょう。
労働衛生実務の内容については、少し戸惑うかもしれませんが
3.作業条件、施設等の衛生上の改善の業務
にチェックすれば問題ありません。
何故ならこれは会社に勤めている人なら誰しもが行ったことがあるからです。
例として、会社のテーブルの端にペン立てがあった場合、気付いた人がテーブルの真ん中に寄せるでしょ?
はい、これが衛生上の改善の業務に該当するのですw
本人確認・受験資格及び科目免除に関する添付書類
本人確認ができる書類として、住民票や健康保険証、または卒業証明書などの提出が必要となります。
その中で原本ではなく、写しを提出する場合は更に会社に原本証明をしてもらう為、一筆書いてもらう必要があるのです。
添付書類としては大きく分けて
- 自分で準備できるもの
- 会社に準備してもらう(お願いする)もの
の2種類がありますので、時間に余裕をもって準備すると良いでしょう。
詳しくは公益社団法人 安全衛生技術試験協会のHPをご確認ください。
試験日程と試験会場
試験は定期的に開催しており、その頻度も高いのでその分合格のチャンスも高いです。
月により試験開催の頻度は異なるので注意が必要です。
試験日程
月に1回~最大6回行われます。
各センターにより開催頻度は異なりますので、こちらも詳しくは公益社団法人 安全衛生技術試験協会のHPをご確認ください。
開催頻度が高いのは関東センターと近畿センターとなります。
試験会場
全国7ヵ所の各センターで試験が行われます。
私の場合、最寄りのセンターが近畿センターでしたので、兵庫県加古川市まで出向く必要がありました。
人により事情は変わりますが、実はこの試験会場が限られている事が一番の難関だったりするのです💦💦
そこで私は出張試験なるものに目を付けました。
これは各センター以外に試験会場が用意され、その試験日時に合わせて受験できるといった便利なモノなのです(^^)
ただし、試験の開催頻度は各センターでの開催頻度に比べると少なくなっています。
その為、受験の際は十分な準備(勉強)が必要となってきます💦
因みに私の場合は奈良県天理市の天理大学にて年末に行われた出張試験を受験し、何とか一発合格する事ができました(^^)
これで試験会場までの移動時間が大幅に短縮できました♬
出張試験の情報も安全衛生技術試験協会のHPをご確認ください。
試験の内容
試験の内容は3つの分野から構成されており、
- 労働衛生
- 関係法令
- 労働整理
となっています。
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の試験内容は共通して以上の3分野から出題されますが、違いとしては
第一種衛生管理者は労働衛生と関係法令の分野では『有害業務に係るもの』『有害業務に係る以外のもの』が出題されます。
第二種衛生管理者は労働衛生と関係法令の分野では『有害業務に係る以外のもの』のみの出題となります。
つまり第一種衛生管理者の試験の方が必然的に出題数は多くなります。
第一種衛生管理者の試験内容
- 関係法令17問
- 労働衛生17問
- 労働整理10問
となっています。
有害業務に係るものが出題される為、第二種衛生管理者の試験に比べて14問多く出題されます。
第二種衛生管理者の試験内容
- 関係法令10問
- 労働衛生10問
- 労働整理10問
となっています。
有害業務に係るものが出題されない為、第一種衛生管理者の試験に比べて14問少なくなっています。
有害業務とは
化学薬品を使用する業務などでは、薬品の取り扱いやそれに必要となる物品について適切な方法や手順が定められています。
更にそんな環境で身体に異常を来さない為の措置の方法、機械の取り扱いや注意点があるのです。
また、夜勤業務や著しく高温な場所や逆に寒い場所での業務も有害業務と定められています。
一般的には聞き慣れない薬品名や機械名が数多く出題されますので、そういった業種でない人が受験するには少し努力が必要となるでしょう。
関係法令とは
衛生管理者の業務内容や配置など、産業医の業務内容や配置、機械の点検や設置に関する事や、一部の労働基準法について等となります。
労働衛生とは
健康保持増進への対策やメンタルヘルス、疾患の理解や怪我に対するアプローチの方法について等となります。
労働整理とは
人間の各部位の名称や役割についてとなります。
心臓や肝臓、血液についてが頻繁に出題されます。
合格基準
合格基準は
- 各分野ごとの点数が40%以上であること
- 各分野ごとの点数の合計が60%以上であること
となっています。
この基準は第一種、第二種ともに共通しています。
一見、第二種の方が合格し易いと思いがちですが、私の場合は工業高校出身ということもあり、ある程度の有害業務についてのベースが出来ていた為、第一種を受験し合格する事が出来ました(^^)
出題数が多いという事は、逆に点数を稼ぎやすいという事でもあるのです。
受験される方は自分の得手・不得手を理解した上で臨むと良いのではないでしょうか。
テキストと過去問
テキストと過去問は共に著者が加藤利昭さんのものをチョイスしました。
『衛生管理者 テキスト 過去問』 などで検索すると上位に表示されますし、評価が高かったため購入しました。
解説やポイントも非常に解り易く纏められていましたのでお勧めです(^^)
注意点としては、実際に自分の目でテキストの内容を確認する事が重要です。
参考書は人により合う・合わないがありますので、あくまで参考にと考えて下さい。
- テキスト https://books.rakuten.co.jp/rb/16179998/
- 過去問 https://books.rakuten.co.jp/rb/15828717/?l-id=search-c-item-text-03
転職に役立つ
衛生管理者は国家資格ですので就職活動時のアピールポイントとしては十分効力を発揮します。
最初にも述べていましたが、衛生管理者は法的に配置義務がありますので所持しているだけで重宝されるのです。
しかしながら、衛生管理者の資格はあくまでオプションと考えた方が賢明です。
福祉業界であれば介護福祉士、製造業であれば危険物取扱など、その職種の基礎資格と併せて所持する事が望ましいのです。
どちらかと言えば、現場で効力を発揮するのではなく、事業所の運営に貢献する資格となっている為です。
最後に
福祉業界の場合、介護福祉士や介護支援専門員など『介護』のみに目が行きがちですが、適切な事業所の運営には衛生管理者の資格が必要となってくるのです。
法人によっては資格手当が支給される場合もありますので、現場目線のみならず運営目線での資格取得も今後のスキルアップに繋がるのではないでしょうか。
また、先に記述した通り衛生管理者は福祉業界だけでなく、事業所の規模や従業員数によっては必ず需要がありますし、合格率も高い事から是非挑戦してみる事をお勧めします(^^)
衛生管理者に関わらず、基礎資格以外の部分を意識する事で日頃とはまた違った視点から事業所を観る事が出来ると思います。
更にそこに資格手当が発生したら、、、嬉しいですよねwww
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