衛生管理者の試験は3つの分野から構成されています。
そのうちの1つである労働衛生について、私が触れた過去問をご紹介してゆこうと思います。
毎回決まって出題される問題や、出題頻度が高い問題、出題頻度が低くマニアックな問題などを纏めましたので受験予定の方は是非参考にしてください。
労働衛生には
- 有害業務に係るもの
- 有害業務に係るもの以外
の2種類があり、今回は有害業務に係るものについてとなります。
最初に
今回は『有害業務に係るもの』となりますので、第一種衛生管理者の受験者のみ適応となりますので第二種衛生管理者の受験者の方は飛ばして頂いて大丈夫です。
各問題の出題頻度ですが、過去6回分の過去問に出題されたものから
出題頻度が
- 低い ➡6回中1回出題
- やや低い ➡6回中2回出題
- 普通 ➡6回中3回出題
- やや高い ➡6回中4回出題
- 高い ➡6回中5回出題
- 非常に高い➡6回中6回出題
としています。
是非、参考にしてください。
労働衛生とは
そもそも労働衛生とは、特定の業務を行うに際し当たっての規定や想定されるリスクについてとなります。
そして、労働衛生の有害業務に係るものとしては具体的には
- 化学薬品などの特徴
- 化学薬品などの危険性やリスク
- 化学薬品などの取り扱いにおける規定
- 化学薬品などの取り扱いで起こる健康障害
- その他の規定
となります。
聞き慣れないマニアックな薬品名が数多く出題されますので、しっかりと学習が必要であり、一般の方では少々苦戦する分野かと思います。
常温・常圧の空気中で蒸気としてあるもの
出題頻度と問われる部分
出題頻度は非常に高いです。
ほぼ毎回出題されますし、ポイントとなる薬品は決まっているので一度覚えてしまえば得点に結びつき易い問題となります。
主に特殊な薬品の特徴についてが問われることとなります。
過去問と選択肢
見出しの様に、単純に薬品を選択することとなります。
該当するもの(蒸気であるもの)
- アセトン
- 二硫化炭素
- 水銀
- 硫酸ジメチル
- トリクロロエチレン
該当しないもの(蒸気でないもの)
- オルト・トリジン
- アンモニア
- 二硫化硫黄
- ジクロロベンジン
- 塩素
- 塩化水素
- クロム酸
- ホルムアルデヒト
化学物質のリスクと優先度
出題頻度と問われる部分
出題頻度は普通です。
化学物質の管理についての方法や規定、リスクアセスメントについて問われます。
過去問と選択肢
優先順位については措置の順番、リスクアセスメントについては規定などが出題されます。
措置の優先順位
- 危険性または有害性の低い物質への代替えを行う。
- 化学物質などに関わる設備などの密閉、局所排気装置などの設備など衛生学的対策を講じる。
- 作業手順の改善、立ち入り検査などの管理的対策を講じる。
- 化学物質の有害性に応じた有効な保護具の使用。
リスクアセスメント
最初に実施する事は、労働者に関わる化学物質による危険性または有害性を特定すること。
ハザードとは、危険性・有害性そのものを指す。
化学物質の譲渡・提供については、その化学物質のSDS(安全データシート)を入手する。
化学物質の健康障害
出題頻度と問われる部分
出題頻度は非常に高いです。
化学物質における健康障害についてが問われます。
過去問と選択肢
特定の化学物質とそれに関わる健康障害の組み合わせを選択する事となります。
- 硫化水素は脳神経障害・意識消失・呼吸麻痺
- 一酸化炭素は体内組織の酸欠
- 二硫化硫黄は気管支炎・歯牙酸蝕症
- 塩素は流涙・咽頭痛
- ノルマヘキサンは末梢神経障害・頭痛・眩暈・多発性神経炎
- ジメチルアミドは肝機能障害・頭痛・消化不良
- シアン化水素は呼吸困難・痙攣
- 弗化水素は骨の硬化・班状歯
- 酢酸メチルは視力低下・視野狭窄
- ベンゼンは貧血・白血病(がん)
- 二酸化窒素は胃腸障害
- ベンジシンは膀胱がん
- ビスエーテルは肺がん
- コールタールは皮膚がん
- 石綿は悪性胸膜中皮腫
金属の中毒
出題頻度と問われる部分
出題頻度は非常に高いです。
特定の金属についての健康障害について問われます。
過去問と選択肢
特定の金属とそれに関わる健康障害の組み合わせを選択する事となります。
- 鉛は末梢神経障害・貧血・腹部の疝痛
- マンガンはパーキンソン病
- 水銀は精神障害
- カドミウムは上気道炎・肺炎・腎障害
- 砒素は角化症・黒皮症
- ベリリウムは皮膚炎・肺炎
- クロムは鼻中隔穿孔・肺がん
粉じんの健康障害
出題頻度と問われる部分
出題頻度はやや低いです。
粉じんに関わる健康障害についてが問われます。
過去問と選択肢
粉じんに関わる健康障害の組み合わせや特定の物質における粉じんの特徴などの組む合わせを選択することとなります。
じん肺
- 粉じんを吸入する事で肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾患。
- 肺結核・気管支炎・気胸・肺がんを合併することがある。
- 炭素を含む粉じんも原因となる。
けい肺
- 遊離けい肺を吸入して起こるもの。
石綿肺
- 胸膜の石灰化が起こる。
溶接工肺
- 溶接時の酸化鉄ヒュームの曝露が原因。
米杉、ラワンなどの木材
- 喘息が起こる。
有機溶剤
出題頻度と問われる部分
出題頻度は普通です。
各有機溶剤の特徴や、それに関わる健康障害などが問われます。
過去問と選択肢
有機溶剤と健康障害、特徴について正しい組み合わせを選択することとなります。
有機溶剤と健康障害
- キシレンとトルエンは尿中代謝物はメチル馬尿酸である。
- メタノールは視神経障害が起こる。
- 二硫化炭素は網膜細動脈瘤、精神障害が起こる。
有機溶剤の特徴
- 低濃度の繰り返し曝露は、頭痛・眩暈・不眠などが起こる。
- 皮膚・粘膜への影響は、結膜炎・湿疹・皮膚の硬化・亀裂が起こる。
- 呼吸器、皮膚、麺幕から吸収され、咳や上気道の炎症が起こる。
- 脂溶性であり、脂肪の多い脳に入り易い。
- 肝障害や腎障害が起こる。
- 有機溶剤の蒸気は空気より重い。
屋内作業
出題頻度と問われる部分
出題頻度は低いです。
主に特殊な作業や設備に関わる知機器や規定が問われます。
過去問と選択肢
他の問題にも出題される文言が使い回されている事があります。
局所排気装置については要チェックです。
問いに対して正しい組み合わせを覚えておけば問題ないでしょう。
粉じんの作業工程
- 密閉化や湿式化を局所排気装置に優先して検討する。
- 有害物を密閉できない場合は、設備内の圧力を外気圧より低くする。
局所排気装置
- ダクトが太すぎると搬送速度の低下が起こる。
- ダクトが細すぎると圧力損失が増大する。
- 空気清浄機はダクトに接続されたファンの前に設置する。
- 吸気量が不足すると排気効果が低下するので、排気量に見合った経路を確保する。
騒音
出題頻度と問われる部分
出題品後は非常に高いです。
騒音についての特徴やそれに関わる疾患、測定方法についてが問われるポイントとなります。
過去問と選択肢
頻出される部分は決まっていますので、正しく理解しましょう。
具体的な数値なども問われる場合がありますし、数値の部分が間違いとして出題される事もありますので注意が必要です。
等価騒音レベル
- 変動している騒音レベルを一定時間の平均値として表したもの。
- 人間の生理・心理反応によく対応する。
騒音性難聴
- 音を神経に伝達する内耳の聴覚器官(蝸牛)の有毛細胞の変性によるもの。
- 初期に認められる40000Hz付近を中心とする聴力低下の型であり、C5DIPと呼ぶ。
- 通常の会話音よりより高い音から聞こえ難くなる。
- 初期に気付き難く、治り難い。
騒音レベルの測定
- 騒音性の周波数補正回路のA特性で行う。
騒音の特徴
- 精神的疲労・自律神経・内分泌系に影響が出る。
- ストレス反応である副腎皮質ホルモンの分泌増加、交感神経の亢進がある。
- 人間の感じ取れる周波数は20~20000Hzである。
- 会話音域は500~2000Hzである。
- 音圧レベルとは、その音圧と人間が聴くことのできるもっとも小さな音域との比の常用対数を20倍して求められる。
有害要因による健康障害
出題頻度と問われる部分
出題頻度は非常に高いです。
各健康障害の特徴が問われる事となります。
過去問と選択肢
各健康障害の特徴の正しい組み合わせを選択することとなります。
主に特徴が他の健康障害の説明となっている事が多くありますので、しっかりと学習しておきましょう。
特に熱虚脱、熱痙攣、金属熱の違いは紛らわしいので要注意です。
凍瘡
- しもやけのこと。0℃以上で起こる。
金属熱
- 悪寒・発熱・関節痛が起こる。
- 金属の溶融作業などで、亜鉛・銅などのヒュームを吸入し発生する。
レイノー現象
- 局所振動障害のこと。振動工具を使用する事で起こる。
- 末梢神経障害や神経障害が起こる。
- 冬季に多い。
減圧症
- 浮上による減圧に伴い、血液中に溶けていたチッソが気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫する事で起こる。
酸欠症
- 空気中の酸素濃度が18%未満のこと。
- 15~16%で頭痛・嘔気が起こる。
熱虚脱
- 脱水により血液量が減少し、血圧が低下した時に起こる。
- 退社時に心拍数が増し、その増加が一定限度を超えた時に生じる。
- 身体の熱を体外に逃がそうとして皮膚付近の欠陥が広がる為、そこに血液がたまって脳へ流れる血液量が少なくなる。
熱痙攣
- 発汗で塩分やミネラルが失われるところに、塩分の無い水分が補給されることで生じる。
マイクロ波
- 赤外線より波長が長い。
- 照射部位の加熱である。
局所排気装置
※写真は局所排気装置ではありません。
出題頻度と問われる部分
出題頻度は普通です。
が、局所排気装置については他の問題でも出題される事が非常に多くありますので、ピンポイントで出題されないとしても、押さえておきたい部分となります。
過去問と選択肢
局所排気装置に関わる構造について、正しい順番が問われたり設備の特徴について正しい選択肢を選び出すこととなります。
局所排気装置の構造
- フード
- 吸引ダクト
- 空気清浄機
- ファン
- 排気ダクト
- 排気口
※主に3と4の順序が問われます。
ダクトの断面積
- ダクトが太すぎると搬送速度の低下が起こる。
- ダクトが細すぎると圧力損失が増大する。
フード
- 開口部にフランジがあると気流の整流作用が増し効果が高まる。
作業環境測定と評価
出題頻度と問われる部分
出題頻度は高いです。
有害物を取り扱う現場での作業環境測定の規定や方法などが問われます。
過去問と選択肢
選択肢ではA測定とB測定の内容が入れ替わっている事が多くあります。
違いをしっかりと学習しておきましょう。
管理濃度
- 作業場全体の環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定する指標のこと。
- 労働者の暴露限界を示すものではない。
A測定
- 有害物の平均的な分布状況を知る為のもの。
- 単位作業所中の有害物質の発散減から遠い場所で作業が行われる場合、作業者の位置における有害物質の濃度を測る為のもの。
B測定
- 原材料を反応槽に投下するなど、簡潔的に有害物質の発散に伴う気中有害物質の最高濃度を測るもの。
- 有害物質の発散減から近い場所。
区分
- A測定の第2評価が管理濃度を超えている単位作業所は、Bs九艇の結果に関係なく第3管理区分となる。
- B測定の測定値がA測定の結果に関係なく第3管理区分となるのは管理濃度の1.5倍を超えている場合である。
測定結果
- A・B測定の結果、いずれも管理濃度に満たない単位作業所は第2管理区分となる。
- A測定の測定値を用いて求めた第1・2評価をB測定の測定値に基づき、単位作業所を第1~3区分までに区分する。
保護具
出題頻度と問われる部分
出題頻度は非常に高いです。
ほぼ毎回出題されますので、各保護具の特徴や用途、取り扱い時の注意点などはしっかりと学習しておきましょう。
過去問と選択肢
主に防毒マスクと防塵マスクについてが出題されます。
防毒マスク
- 有機ガス用の防毒マスクの吸引缶の色は黒。
- 一酸化炭素用の防毒マスクの吸引缶の色は赤。
- 破過時間とは、吸引缶が徐毒能力を失うまでの時間である。
- しめひもは後頭部で固定し、耳にかけてはいけない。
- ガス・蒸気状の有害物質が粉じんと混在している場合、防塵機能を有する防毒マスクを使う。
- 2種類以上の有毒ガスが混在している場合、いずれの有毒ガスに対応したマスクがないといけない。若しくは、送気マスクか自給式呼吸器を使用する。
防塵マスク
- 手入れは圧縮空気の使用や、たたいて汚れを払い落としてはいけない。
- 顔面と面体の間に物を入れてはいけない。
- 使い捨てではなく、取り換え式のものが好ましい。
- 型式検定合格基準標章のある防塵マスクは、ヒュームに対しても有効である。
電動ファンつき呼吸用保護具
- 空気中に浮遊する粉じんなどをフィルタにより除去し、清浄空気を電動ファンで吸気するもの。
- 有害物質の含む空気の除去ではない。
特殊健康診断
出題頻度と問われる部分
出題頻度は高いです。
各有害業務に係る労働者に対して行われる健康診断についての特徴が問われます。
過去問と選択肢
出題される部分は毎回ほぼ決まっており、一度覚えてしまえば得点に直結します。
特殊健康診断の特徴
- 有害業務への配置換えの際に行う特殊健康診断は、業務適正の判断とその後の業務の影響を調べる為の基礎材料を得るという目的がある。
- 健康障害は、自覚症状なしに病状が悪化し、進行する先行出現型であり、自覚は先に出現しない。
- 対象とする特定の健康障害と類似の疾患との判別が一般の健康診断より一層強く求められる。
- 適切な健康診断デザインを行うためには、作業内容と有害要因への曝露状況の把握が必要となる。
- 有機溶剤は生物学的半減期が短いので、尿中の代謝物の量の検査のため採尿の時刻は厳重にチェックが必要である。
- 振動工具の取扱者については、年2回の冬季に行う。
最後に
今回は有害業務に係る労働衛生についてご紹介しました。
以前にご紹介した関係法令と同じく、聞き慣れない薬品名や設備名が数多く出題されますので戸惑ってしまったかもしれません。
しかしながら、特殊なモノであるが故に覚えるポイントは限られていますので、考え方を少し変えてみれば得点に直結し易い分野だと思います。
また、局所排気装置の様に、ピンポイントで特徴を問われること以外に、総合的な問題の選択肢のひとつとしても文言が使い回されている事も多いので、一度覚えてしまえばこちらも使い回しが効くのかもしれません。
関係法令の様に、長々と規定のみの学習という訳ではなく、一問一答の様な形式で出題される問題も多くありますので、第一種衛生管理者が適応されない職種に就いている方であっても受験を検討されては如何でしょうか。
最後に衛生管理者についてや、基本的な勉強方法などの記事も過去にアップしていますので、興味のある方は是非参考にしてください(^^)
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